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横浜の探偵ブルーフィールドリサーチ

家出人調査日記 東北編#1

※noteではイラストも入っており読みやすいです



※個人名や地域は特定を避ける為に名称を変更しています。


201X年12月


冬が重い腰を上げ本格的な寒さを提供し始める12月の頭。

早めの昼食を取り自宅でくつろいでいた私に当時勤めていた探偵事務所の所長から一本の電話が入った。




「青野さん、急で悪いんだけどこれから調査に行ってくれない?」


「全然いいですよ、暇していたところなんで」


「助かるわ、場所なんだけどさ。東北県で人探し。書置き残して帰って来ないみたいなんだよね。」


「これから行くには遠いですね。向こうに着くのは夕方ですよ。」


「だよね、遠方で申し訳ない。じゃあこの案件正式に受けてすすめますね。」


「わかりました、もう一名は弟子の杉原君を連れていきますよ。準備整い次第出発します。実施日数は何日?」


「その辺もこれから打ち合わせするんだけど、依頼人まだ若いし、予算的にも3日か4日ぐらいかなぁ。」


「なるほど、詳細は判り次第送って下さい。移動中に目を通しますんで。」


「よろしく頼みます。道中気をつけてね。」


電話を切り、身支度と着替え等を少し大き目のバッグに詰め込んだ後、妻にこれから家出人調査で東北に行ってくると伝えたところ「あら、お土産お願いね。」と平和な返答が返ってきた。


電車で東京駅まで行き、東北新幹線の改札前で弟子の杉原を待っていた。確か杉原は家出人調査は初めてだったかなと思案していたら、




「お疲れ様です、お待たせしました。」と杉原がやって来た。そこで私は杉原が家出人調査は初めてだと確信した。それと同時に杉原にアドバイス。


「お疲れ様。家出人調査する時はキャリーケースじゃなくてリュックかボストンバッグにした方がいいぞ。」


「え、なんでですか?浮気調査の出張はキャリーケースで行ってるじゃないですか。」


「家出人調査ってさ、いなくなった人を探すじゃん?調査中に見つかった場合どうすると思う?」


「え、警察に電話するとか?俺達で確保?いや、わからないです。」


「警察に電話するってのはよっぽどな時だよ、それと俺達は探偵だから確保は出来ない。正解は依頼人に報告するんだよ、しかもちゃんと顔の写真を撮って。」


「報告はするんでしょうけど、それとキャリーケースはなんの関係があるんですか?」


「依頼人に報告して現地に来てもらうんだよ。で、依頼人に確保してもらうんだ。つまり俺達は依頼人が現地に来るまでずっと尾行し続けなきゃいけないって事。今回の案件は東北県の人で探すのは近隣だろうし、車で家出したみたいだから大丈夫なんだろうけど、仮に依頼人が東北県で、家出人を見つけたのが関西方面。さらに家出人が免許を持ってない人間で、依頼人が関西に到着するのにどれぐらい時間がかかると思う?へたしたら到着は翌日なんてざらだぞ。その間ずっとキャリーケースを引きずりながら尾行ってどう思う?」


「確かに。目立ちますし、邪魔ですね。」


「そういう事。」


杉原は浮気調査に関しては尾行のセンスがあるようだし、若さも相まって臆せず突き進むタイプだ。


しかし、家出人調査はそれだけでは難しい。

家出人の思考に近づき何を考え、どう動くのかと彼らの行動予測を立てたり。聞き込みでどれだけ情報を引き出せるか、聞き込む人間に合わせてこちらの聞き方を変化させたりと総合的に対人能力が必要となってくる。


「俺、家出人調査は初めてなんで緊張します。色々と教えて下さい。」と元気な声で話しながら東北新幹線の改札を通過する。


新幹線の車内、隣の杉原は既に寝ているがスマホに続々と家出人の詳細が送られて来る。


山田達夫:仮名、33歳

東北県内中堅どころの製造メーカーで工場勤務

失踪して3日目。2日目午前中に警察に届けたが、なんの進展もない為3日目の午前中に探偵事務所に依頼

書き置きを残し、車で失踪中


大事な顔写真も何枚か送られて来た。

数か月前に撮られたと思われる家族写真も混ざっており、幸せそうな笑顔の達夫さんと依頼人である奥さん、そして奥さんに抱かれて眠る1歳前後の赤ん坊。


達夫さんは数ヶ月ほど前から鬱で会社に許可を取って仕事を休んでいた。失踪したのは休業の期間が終わり2ヶ月ぶりに出勤しなければいけない日だったとの事。


私自身は図々しい性格なのか、鬱を患った事がないのでわからないが。家族が増えてこれからって時期に達夫さんが鬱になる理由が見つからなかった。


私は隣で気持ちよく寝ている杉原を横目に静かにPCを操作し店舗等に配るビラを作成していた。




18時少し前に最寄り駅に到着し、移動中に予約していたレンタカー屋で車を借りる。

12月の頭なので既に日没し辺りはもう夜である。


また、今年は暖冬のようで駅前や市街地に積雪はなく雪道が不慣れな私達にとっては有り難かった。


「では僕は自宅を境に東のエリアでいいんですね?駅とかお店があるから助かります!」


「いいよ、初めての家出人調査が何もない山道とかだと大変だろ。もうこんな時間だし今日は夜中の0時を目処にホテルに戻って来なよ。」


「ありがとうございます!では何かあったら連絡します」


「運転気をつけろよ。」


こうして東北県での家出人調査が始まった。




神奈川 横浜の探偵 ブルーフィールドリサーチ

note 横浜 ブルーフィールドリサーチ https://note.com/bluefield045


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